夏の終わりが近づいてくる。
いつも、夏に僕は期待をしていた。
花火。祭り。海。白い雲と青空。瑞々しいもの。女の子の肩。
「夏も、もう終わりだな」と強い日差しを失った庭を見て、知り合いが言った一言に、今年も何もなく終わったんだ、という気持ちで心の中で号泣していた。
いつまで経っても辿り着けない幸せな夏。
落葉のような敗北感。
「お前は恵まれているんだぜ」と誰かに言われる事がある。
だけど、悔しいんだ。
10年前、仕事で自分1人だけ行く事が出来なかったロックフェス。
繰り返し訪れる、「今年こそは」と、期待して結局何も起こらず、ただ狭いスタジオや自室で葛藤しているだけで過ぎていく7月と8月。
いつも追いかけるだけで終わる、青空の下にある女の子の眩しい笑顔。
触れる事が出来なかった。
まだ、こんな俺でも、本当に少しだけでも運が残っているのなら、
今年出会う女の子と、どうか生涯を共にさせてくれ。
もう涙を落とす気力が無いんだ。
頼む、頼むよ。
じゃなきゃ、もう死なせてくれ。